第16回 「独り酒」
お酒は独りで静かに飲む、これが私のポリシーでした
この先ずっと、このまま生きていくんだろうと思ってました
近所に行きつけのお店が2軒あって、1つは夫婦でやっている小さな居酒屋
マスターもぐいぐい話しかけては来ず、「……今日、いつもより早いですね」くらいの会話、行くと何も言わなくても灰皿が出てくる、くらいの行きつけレベル
もう1つは若い男がやっている小さな串焼き屋
こちらは逆で、結構話しかけてくるタイプのマスターが独りでやっているお店
今回は後者のお店で飲んできたんですが、まあいつも通りマスターが話しかけてきて、ああじゃねぇこうじゃねぇと結構喋ります、すると
「私はね……」と、急に隣のおっさんが会話に入ってこようとしてきました
たまにいるじゃないですか、こういうおっさん
知らない人間、女ならまだしも青年に話しかけてこようなんぞどういう気持ちなんだと
私には意味が分かりませんでした
いつもなら「Ah……」と元気のないアメリカ人で返すんですが、今日はちょっとピストルを構えてみようと、「Yeah!」で返してみました
いつもの私なら絶対にこんなことはしないし、酔いに任せて勢いでもしない
でも酔った勢いで女の子にLINE送ったことはありますけどね、マジで思い出したくない過去
何かこう、悪くなかったんですよね
自然と言葉も出てきて、地元の最寄駅の名前を知ってて親近感湧いて、何かこう、悪くなかったんですよね
そんな私を認めたくないのも事実
「お酒は独りで飲むんだい!」って心の中にベロベロの私がいます
おっさんになったら、居酒屋で見知らぬ青年に話しかけそうで恐い
世にも奇妙な物語みたい