第73回 「ゴミ箱」
独りで飲みにはよく行くが、ご飯を食べにはあまり行かない
日曜の昼下がり、といっても15時前だったが、近所にバーガーキングがオープンしたので行ってきた
ショッピングモールの中に入ってるタイプのバーガーキングで、さすがは日曜ということもあってだいぶ混んでいる、それはそれは蛇のような、蛇のような行列だった
家族連ればかりで、おひとり様が並ぶのはちょっと恥ずかしかったが、同じくおひとり様の女性がすでに並んでいたので、「お、いいのがいるな」と思い私も行列に並んだ
並んでいる途中にメニューを決めようと選んでいたのだが、ワッパージュニアの姿が見つからない
祝日だからジュニアはいないのか、ノーマルバーガーの写真を見てもたぶん食えそうにない大きさ、ちょっとパニック気味になってしまった
しかし無情にも列は進む、列から抜け出そうと思ったが口はもうバーガーの口だ
仕方ない、みっともないけど大人なのにバーガーを残すか、名前も忘れたでっかいバーガーにしようと腹をくくり、「お次のお客様」と地獄へ案内された
注文しようとカウンターのメニューに目をやると、小さく小さく「ジュニアサイズ有り」と書いてあるではないか
「こんな見にくいとこに記しやがってクソが」という怒りの感情と、「ちょうどよくお腹いっぱいになる~」という安堵の感情が混ざり「ワッハージュニアのセット一つ」と「パ」の半濁音がどっかに行ってしまった
列に並んでいる時間くらいでは混雑もそんなに解消しないので、席はだいぶ埋まっていた
空いているところといえば、テーブル席に囲まれた、中央のおひとり様専用の島みたいな席のみ
席に座ったのはいいが、目線をどこにやればいいのか悩みに悩んだ
目の前に目線をやれば赤の他人と目が合って気まずいし、かといってスマホをいじりながらというも行儀が悪い
探しに探してゴールはゴミ箱だった
バーガーを食べながら、ずっとゴミ箱を観察していた
誰一人として紙類とプラスチック類は分別しない、「飲み残しはこちらへ」の中身はどうなっているんだろう
私が天才だったら、この風景から何かヒントを得てとんでもないことをしでかせたかもしれない、凡才はゴミ箱をずっと見ていても「ゴミ箱」としか思えない