第82回 「雨音は聞こえない」
朝、寒さで目が覚めた
昨日家に帰って来たのが24時前、昼間の暑さが部屋中にこもっていたので窓を開けて寝ることにした
入ってくる風が気持ちいい、部屋の温度に対してちょうどいい温度の風
明日朝から雨が降るのは分かっていた、気温もめちゃくちゃ低くなることも分かっていた
結果、寒さで目覚ましより1時間半早く起きてしまった、舌打ちも凍るほどの寒さ
二度寝顔はしかめっ面だったと思う
昼間はいつも通りバイトだった
家に帰って来て、煙草を吸おうと外へ出たら向かいの家の玄関に女子中学生が一人
「ああ、もう下校の時間かいな」と時の経つスピードに呆然としながら煙草を吸っていると、「ドン! ドン!」と何かを叩く音が聞こえてきた
音のする方に目を向けると、その女子中学生がひたすらに玄関のドアを蹴っている
トーキックの音量だ、人生の中でサッカーに充てた時間はほんの数十分しかないが、「トーキックはめちゃくちゃ痛い」というのは覚えている
たぶん鍵が無くて、家の中にいる誰かに気づいてもらおうとしてドアをトーキックしているのだろうと思った
ピンポンを鳴らせよ、っていうかこのご時世小学生でもスマホを持っているのだからスマホを鳴らせよ
トーキックしなければいけないほど追い込まれているのかと心配になってしまった
閑静な住宅街に響くドアをトーキックする音、思っているより周りに聞こえる
もっと落ち着きなさい、「今すぐどうぶつの森をやりなさい」と3DSをプレゼントしてしまいそうになった
何回かドアをトーキックした後、ぬっとドアが開いて結局その女子中学生は家の中に入れた
いや家の中に誰かいたんかい
ただ血の気の多い女子中学生だっただけかい