白塗りの裏側

ヴィジュアル系バンドのボーカルと嘘をついて、平成29年4月26日まで嘘を書いてました

第92回 「真夜中」

先日、夜遅くまで先輩と飲んだ

解散したのが3時前、いつもならこの時間は終電を逃しているので、そのまま始発まで飲んだりカラオケに行ったりして時間を潰すことが多い

ただ今回は自転車で移動していたので、始発を待たずに家に帰ることができた

 

3時に外にいるなんてことはほとんどない

12月も半ば、この世の終わりかというくらい寒かった

なのに帰り道、結構外でフラフラしている人間がいて「こんな時間に外にいるなよ、どういう神経してんだ」とブツブツ言いながら自転車を漕いでいた、どういう神経してんだ

 

シメに富士そばを奢ってもらったというのに、無性にパンが食べたくなって、しかも「コンビニで買うのちょっと高いしな~」と酔っぱらっているのにも関わらずお金にちゃんとシビアになる自分にちょっと引いて、吉祥寺のドンキホーテに寄った

3時半のドンキホーテ、店内の照明が4割増で明るく見え、「さっき飲んでたウーロンハイにクスリ入ってたんか?」とクソみたいな疑いを持った、マジでつまらないと今は思う

こんな時間にも関わらずお客さんは結構いた、自分を含め「底辺かよ」と思った

 

さすがにこの時間になるとパンは売り切れだったので、諦めて家の近くにある24時間営業のスーパーに寄ることにした

その道中、絵に描いたような酔っ払いの女性とすれ違った

顔を電柱にくっ付けて、電柱とその女性で漢字の「入」をずっと表現している

ご尊顔は確認できなかったが、小奇麗な服装でとてもそんな状態になるようには思えなかった

もうバスも走っていない、駅からも遠い、近くに居酒屋もない、何故こんなところでフラフラしているのかと頭の中が「???」になってしまい、脳みそが溶けだす前にスーパーに寄った

パンを買いながら、もしまだ女性が「入」を表現していたら声をかけようと心に決めた、その優しさ、さながらしょくぱんまんのようである

店を出て、来た道を戻ると、その女性はすでに別のしょくぱんまんに介抱されていた

 

一足遅かった

女性が「申し訳ありません……」とボヘミアンのような声でずっと呟いている

「いやそんな声してたんかい!」と笑いそうになってしまった

 

心にちょっとだけあった下心が、一瞬にしてなくなった