第98回 「ウンコはウンコ」
先日、バイトをしている串焼き屋に近所の小学校の教師だと思われるお客様がいらっしゃった
「今から5人入れますか?」と最初に3人やって来て、快く受け入れると数分後、ぞろぞろと仲間がやって来て結局6人になっていた
「透明人間が仲間にいるんか、ちゃんと把握してから来いよ」とちょっと嫌な気分になった
メンバーは一番若い仕切り屋とその次くらいに若い太鼓持ち、40前後のまあまあ経験を積んできた2人とベテランが1人、そして若い女教師が1人の計6人
若い仕切り屋が気を利かせてメニューを注文する
「えーと、ここからここまでを全部1本ずつ」「おいマイケル・ジャクソンみたいな頼み方だな、ガハハハハ」
手堅く笑いを獲っていたが、オーダーを取りながら私はイロモネアの右端の絶対に笑わない審査員のような顔でその様を見ていた
頭の隅っこで「幸せそうだなあ」とも思った
若い仕切り屋がめちゃくちゃ気を利かせていたが、私にはもうウンコが気を利かせているようにしか見えなかった
まだドリンクが半分しか減っていないのに「何か飲まれますか?」と聞いて「まだいいよ」と返されているシーンを何べんも見させられている、NHKくらい再放送が早い
うちは一枚の長いお皿にどんどん串焼きを置いていくという『ちょっと良いお寿司屋さんみたいな』スタイルでやっているので、「串から外す際は別の取り皿でお願いします、次の串焼きを置けるスペースを空けていただけると助かります」とお声かけしている
「はい、分かりました」と言いながらそのウンコは長いお皿の上で串から外しだした
自分でフッて自分でオトすな、そして周りも「店員さん取り皿でって言ったよね?」みたいなことを誰一人して言わなかった
タレと塩が混ざった、ただの鶏肉とその他諸々の炒め物を「ウメー、ウメー」言いながら食べていたので、改めて頭の隅っこで「幸せそうだなあ」と思った
ウンコは一応お箸を逆にして持つ方で串から外していた、気の利かせ方を極振りしているウンコだった
ウンコはどうやら学校内ではいイジられ役らしい
うちに来たグループとは別のグループの連中が近くの別のお店で飲んでいるらしく、その場に潜入してこいと命じられていた
「あ、じゃあ動画撮ってきまっす!」とウンコは勢いよく飛び出して行った
多分その学校には派閥みたいなものがあって、あまり派閥間の仲がよろしくないんだろう、しかし今時「中学生女子でもそんなことはしないよ」と思った
意気揚々と戻って来たウンコは爆音でその動画を仲間たちに見せる、他のお客様もいるのに
親子二人でいらっしゃっていた子どもの方は、音を出さずにスマホでゲームをしていた
「こういう風刺画ありそう」と思った
盛り上がっているというより騒いでいるといった方がいい宴も終わり、お会計を済ませ、ウンコがウンコかオシッコをしにお手洗いへ入った途端、「アイツ置いて行こうぜ」と言いながら仲間たちがそそくさと店を出て行った
ウンコは取り残された
あれだけ気を利かせて、盛り上げる為に別の派閥の飲み会にも潜入しに行ったのに、ウンコは取り残された
これだから人生は面白いと改めて気付かされた一日だった