第24回 「存在感」
バイト先の休憩室の一角に喫煙スペースがありまして
休憩室という箱の中に、喫煙スペースという箱がまたある
その箱はガラス張りになってて、誰がたばこを吸ってるか分かるし、そのガラスにはちょっと前まで「たばこを吸っている男」という謎のイラストがたくさん貼られてました
さすがに誰かが「気が狂うんですが」と異議申し立てたのか、今は全部はがされてます
そんな見世物小屋の中でたばこを吸ってたときのこと
休憩室には私独り
従業員が一人入ってきて、見世物小屋の隣にある自販機でドリンクを買い、休憩室の電気を消して出て行きました
私、ここにいるよ
たばこの灯りだけがぼうっと残ります
これ、一度や二度じゃないんですよ
確かに私とあなたの間には薄い1枚の板がありますが、さすがに空気というか、見えない人間の匂いで人がいるかどうか分かるでしょ
みんな馬鹿の一つ覚えの如く、休憩室から出て行くときに電気を消しやがる
たまに電気を消した直後、私の念を察知したのか「ああ、すいません」と言って電気を点ける人もいます
テメェもテメェだけどな
みんな運転免許持ってないんか
「かもしれない運転」を血反吐が出るまで習っただろうが
私の存在感が薄いのかしら
なんて馬鹿ことを思うのはもうヤメにして、自分に素直に生きて行こうと思います
ばかたれが
休憩室の電気が点いていたら、そこに誰かがいるかもしれない