第52回 「さようなら」
バイトもいよいよ最終日
慣れてきたのかバッチリ3時に起きれまして、昨日と同じ仕事をただひたすらにこなす
えらいもんで暑さにも慣れました
ただ周りの男たちに比べて私は汗をあんまりかかない体質の人間なんだと分かりました
みんな黒いポロシャツに塩噴くくらい汗かいてんだもん、浜辺かよって
周りがおっさんばっかりってこともあって、2日目3日目と日が経つにつれてどんどん人が減っていくんです
脱落者って言うと何かあれなんですが、脱落者ですよねもう
大体前日に缶チューハイを買ってることが確認できた人間が脱落していきますね
当たり前だよ、そんでそんな人間が何人もいるっていうこの状況ね
ヒリヒリするぜこの空間
ここで一服
カリカリ梅の種の中にある白いやつくらい小さなエビに、カリカリ梅本体くらいの衣を纏ったエビチリが入ったお弁当を食べてちょっとだけ元気になります
鶏肉とカシューナッツの炒めの方にすりゃよかった、マジで二者択一に恵まれない
そして18時
仕事終了まであと1時間、「長かったなあ……」と沈んでいく夕陽を眺めながら控室に戻ると、一緒にやってきた人間がほとんどいない
どうやら現場の人間に残業を臭わされたらしく、みんな尻尾を巻いて逃げちゃったみたいです
やられたよ
帰るタイミング完全に逃したよ、そりゃ私だって帰りたいよ、あんなにこき使われて
だけど「私も帰ります」なんて言えるタイプの人間じゃないし、結局残業をしていく羽目に
もう地下労働者ですわ
「嫌だ厭だ否だイヤだ……」と嫌だ念仏を唱えてたんですが、蓋を開けてみると30分程度物を運ぶだけでした、肩すかし半端ねぇな
あんな状況で残業するような人間なんて屈強な男ばっかりだったんで、私は端っこの方でぷらぷら物を運んだり運ぶフリをしたり
まあ通常運転ですわな
そしてさようならの時
まあ派遣バイトつっても、2泊3日共に過ごした仲ですから、何者か分からなくても生まれるちょっとした絆というか、絆って言っちゃうとアレなんですけど
絆みたいな感じだけど絆よりは3ランク下くらいにあるやつ、名称が分からないんで良いの知ってたら教えてください
長かった2泊3日の派遣バイト、終わって控室出たらもう誰もいねーでやんの
気持ちいいね、こうじゃなきゃ派遣バイトは
帰りのりんかい線、行くときと帰るときじゃ乗ったときに思うことが違うような気がしました
そんな大した3日間じゃなかったけど