第61回 「食べれない」
プチ潔癖症の私ですが、ここ数年で温泉はナシよりのアリになってきました
まだ入る前に「この温泉は綺麗なんか?」と頭によぎりますが、やっとお湯に浸かる気持ち良さが勝るようになってきて、歳を取ったなあってしみじみ思います
「歳を取ったなあ」って思った瞬間がこの旅行中にもう一つあって、まあ食べれる量が減ったんですよ、もうね、全然食べれないの
夕食の時間、旅館のお食事処に行ったらテーブルの上に1人用のすき焼き鍋が置いてあって、その隣にそれはそれは雑巾のようなでっかい牛肉が神々しく光っておりました
しかも4枚、その牛肉を他の具材の上に被せて鍋のふたのようにして火を通して食ってくれっつうんだから、バカヤロウって感じですよ
ちょっと赤みが残るでっかい牛肉を、名前は忘れた凄い新鮮な生卵にくぐらせて食べたら、脳汁がドバドバ出てきて脳汁ダムが決壊しそうになりました
量より質、美味しい物はちょっとだけでいい
肉4枚もいらんかったです、マジで肉2枚でよかった
3,4枚目の肉がもうホントにきつくて、口に放り込んでは生ビールで流し込む、っていうバカヤロウな食べ方しちゃって今は謝罪の気持ちでいっぱいです
何とか食べ終えてひっくり返ってると、目の前に刺身がやってきて、何やらこっちに向かって話しかけてくるではありませんか
「HEY!」
「HEY!」じゃねぇよ、海の幸もあんのかい、これ山の幸もありそうだなと思ったのもつかの間、刺身の後ろに天ぷらがやってきて、こっちに向かって話しかけてきてたけど刺身のことでいっぱいだったんで何て言ってたかは分かりません
ただ、こちらから天ぷらに向かって「無理だよ」って言ったのは何となく覚えてます
「パーティーの始まりだ」と言わんばかりに、このタイミングでお米をおひつからよそおうとしたんで慌ててストップかけて大変でした
クレジットカードをどっかに落として慌ててストップかける、みたいなやつがイマイチピンと来てなかったんですが、この一見で何となく分かったような気がしました
ちょっとでも茶碗に米をよそわれたら終いなんでそりゃ一生懸命でした、こういうことか、そりゃ焦るなあ
そんでお吸い物は出るわ、デザートは出るわ、終盤の追い上げに見事に敗れほとんどお残ししてしまいました
同い年くらいの人ならたぶんペロッていけちゃう量だとは思うんですけどね、一口ずつつまんで「もういいわ、次」って全部ちょっとだけ食べました
お姫様じゃないんだから
皆さんが思う「量より質」っていう言葉の量より、私は二回りくらい量が少ないんじゃないでしょうか
自分の「量より質」って言葉の量が可視化できるようになれば、これほど楽なことはないのに
第60回 「紅茶」
結局ミルクティーは「紅茶花伝」が一番だと思います
美味しさもそうだし、基本470mlのスタイリッシュなフォルムがお店に置いてあるじゃないですか、あれを飲んでる人の余裕っぷりにとても惹かれます
腹八分で抑えるというか、「満腹ってダサくない?」っていう感情に似てますね、美味しい物をちょっとだけ、嗚呼大人の響き
だからどんなに安いミルクティーがあろうとも、「紅茶花伝」があれば絶対に「紅茶花伝」を買うという見栄をよく張ります
私にとって「紅茶花伝」を飲んでる人はとてもステータスが高いように思います
私もそう思われたいから見栄を張って「紅茶花伝」を買うんです
たまに、ホントたまーになんですが、「紅茶花伝」を置いてないお店に当たるときがあります
今日がそうだったんですが、そういうときはもう諦めて一番安いミルクティーにしちゃうんですよ
「紅茶花伝」を見つけるまで色んなお店を回ったりはしません、時間ももったいないし面倒だし、ちゃんと血眼になってまで探して「もう紅茶花伝しか飲まんぞ」ってなったら今よりちょっとは面白い人間になれると思うんですが、まあ所詮その程度
とりあえず、訳の分からない一番安いミルクティーに手を出したら、それはそれはうっすーいミルクティーでした
香りはミルクティーなのに、舌で転がすとほとんどお水なんですよ
遠くの方に紅茶がキラリと光ってる、北斗七星のようなミルクティー、お粗末でした
大きい声じゃ言えないんですが、あれ絶対薄めてますよ
液体石鹸ってめちゃめちゃ薄めるじゃないですか、感覚で言うとあれくらい薄めてます
元々500mlのミルクティーを一回ペットボトルから出して、お水と9:1の割合で混ぜてもう一回ペットボトルに詰め直してると思うんですけど、もし社会の闇を暴いてしまったようでしたらごめんなさい
第59回 「欲」
8月になって3日が経ちました
月末の27日、28日辺りくらいから来月は1日1日をもっとちゃんと過ごそう、時間は限られてるんだから無駄に過ごさないようにしようと心に誓い、29日から30日、31日までは自分の欲を開放しめちゃくちゃに過ごすという日々を、今年の1月から先月の7月まで過ごしてました
つまりはダメダメってことです、嗚呼情けない
今日は昼間にとても大事な用事があって、これが上手くいったら夜はお酒を飲もうと思ってました
結局上手くいかなくて、気分がどよーんってなってしんどいなあって落ち込んでたら、ふっと「パチンコ行こうかな」って頭になって、すぐさま犬が体の水滴をまき散らすが如く身震いして事なきを得ました
とりあえず第一関門突破して、あと何関門あるんだよって話なんですけど、第二関門は第一関門のすぐ近くにあって、分かりやすく言うとSASUKEの重い扉を持ち上げて進むステージの扉の距離感くらいですかね
第一関門を突破してすぐ、上手くいったらお酒飲もうと思ってたけど、結局上手くいかなかったからお酒でも飲んでスパッと寝ちまおうっていう脳にちょっとずつなってきたんですよね
「飲んでも飲まなくても同じでしょ、結局明日は来るんだし」っていう超絶ダメダメ人間の武器を振りかざそうとしたところで、後ろから誰かに刺されて事なきを得ました
今日は事なきを得まくってます
そのおかげで、今はそんなに聴いたことのない茅原実里の曲を何か分からないけど聴きまくってます、非常に無駄のない時間です
ただ同時に今めちゃくちゃ自慰行為したいんですよ
関門はだいたい第三までありますからね、この扉はSASUKEのステージで言うとめちゃくちゃ重いですから
完全クリアまであともう少し
第58回 「1日で2日分」
午前中、出掛けるときはまだ雨が降ってなくてよかったんだけど、夜はバイトがあったんで一回家に帰って来なくちゃならなくて、家の最寄駅に着いたときにちょうど降ってきやがった、くそったれ
あんまり大きな声じゃ言えないんですが、傘差し運転を、ああ傘差し運転をして、万が一警察に捕まったときの言い訳ばかり考えながら自転車に乗ってます
先日も、夜バイト帰りに自動車が警察に捕まってて、聞き耳を立てて横を通り過ぎたら「明日も予定があるんで!」と脳みそを一番使わない言い訳をしててガッカリしました
最寄駅から家まで約10分
折り畳み傘じゃ絶対防げない雨量、駐輪場に着くまでにまず靴が逝っちゃいました
自転車の鍵を外して、ウォークマンをしまって、サドルにお尻を乗っけた時点で皮膚の70%が濡れてます
そんなに濡れてるならもう安全第一で傘差さずに運転すればいいじゃない、マリー・アントワネットならきっとそう言うと思いますが、100%は濡れたくないという自分のちょっとした抵抗の方が勝ってフラフラしながら最初の信号へ
何気なくリュックを触ったらびしょびしょで、ああもう後ろもダメなんだと空を見上げました
曇天、青信号もちょっと紫に見えてきました、この虚無感一体何なんでしょうか
もう濡れてないところお腹だけだよ
お腹だけ、前を歩く人間を見てみるとリュックを前にしているではないか、点と点が繋がって線になりました、これだよこれこれ
背負ってたリュックをすぐ前に持ってきて、これで勝ったと誰と何の勝負をしてるんだか分かんないんですが、しばらく運転してたらリュックがまあずれるずれる
肩ベルトを女子大生が背負ってるリュックくらい緩めてたことを忘れてました
ずれる度に自転車停めて「よっこいしょ」と直し、直す度に雨に濡れて結局家に着いたときには皮膚の95%が濡れてました
差しても差さなくても変わんねえじゃねえかよ、時間返せよちょっとイケると思った15分前の自分よ
服も靴下も濡れましたが、この雨の中バイト先には行かなくちゃいけないんで、着替えるかどうか迷いました
服も靴下もズボンも靴も替えて、今バイト先から帰って来たんですが、替えた服も靴下もズボンも靴も濡れました
1日の雨で結局2日分濡れました、もうホントにどよーんですよ
でももし雨側に人を濡らさないといけないノルマがあるとしたら、お役に立てて光栄でございます
第57回 「ダサい」
昨日、遊戯王のイベントがあったんで六本木に行ってきました
高校時代に遊戯王にハマってて、卒業と同時に全て売り払って東京に出てきたんですが、去年公開された映画がきっかけでまたやり始めることに
それにしても六本木で遊戯王って場違い過ぎるだろ、って毎回イベントに行く度に思います
六本木ですれ違う人間の何人が、これから私がデュエルをしに行くなんて思うでしょうか
予定より早く着きそうだったんで新宿のブックファーストに寄ってマンガを買い、どっかで時間を潰そうと喫茶店に入りました
いつも六本木に行ったら入る喫茶店が、たぶん中華そば屋になってて無くなってました
結構何回か入ってる喫茶店なんですけど、全然覚えてないんですよ、ここにあったかも定かではないし
チェーン店だったことは確か、スタバ系のお店で、でも煙草吸えたからスタバではない、あの辺にあるんで知ってる人いたら教えてください、あの辺にあるんで
日曜の夕方はさすがに混んでて、どこもかしこも買い物帰りのノースリーブマダムでいっぱいでした
「ああ、だいぶ生活レベルが違うなあ」とアホみたいなことを考えながら店を探し、ふと入ったのが椿屋珈琲店
聞いたことはあるけど入ったことはないお店
「リンガーハット」や「ゆで太郎」とか「てもみん」もそう、結構聞いたことはあるけど入ったことないお店が多いんですけど、入り口にでかでかと「喫煙席あります」って張り紙があったから躊躇なく飛び込みました
お店に入ると、大正時代からそのままタイムスリップしてきたような制服を着た店員さんが迎えてくれて、そのままお席にご案内
「あ、ヤバイな、お先にお席の確保お願いしますのアメリカじゃ絶対できないスタイルの喫茶店じゃねぇんだ」
もう心臓はバクバクで、初めてルノアールに入ったときのことを思い出しました
もうそんなにご丁寧にしなくてもいいですよ私はそんな人間じゃないですから、と思わず言っちゃいそうなくらいご丁寧な接客
メニューを開くと一番安い珈琲が980円の文字、やっちまった
ルノアールより高い喫茶店なんてこの世に存在するんか、まだまだ私の知らないことばかり、お恥ずかしい
おしぼりも出されてお冷もちょっと口をつけちゃったし、何よりあんなご丁寧な接客を受けた後に「間違えました」なんて許されない
もう一番安い980円のアイス珈琲にするか、いつも喫茶店に入ったら注文するカフェオレ(1000円)にするかでだいぶ時間がかかりました
いやもう20円しか変わんないならいつも飲んでるやつにしろよ、って冷静になった今、あのときの私にいってやりたい
結局980円のアイス珈琲にしました、ここが一番ダサい
アイス珈琲なんてあんまり飲まないのに、20円安いからしょうがなく頼んでやんの、ああダサい、ダサいダサい
まあでも美味しかったけどね、さすがは980円です
レジでお釣りの20円を受け取り、夜の六本木へと姿を消していった私です
この20円でいったい何ができるのか、アイス珈琲であれだけ美味しいんだから、素直にカフェオレにしとけばよかったな
第56回 「脱獄」
イヤホンのRの方が聴こえなくなって1週間弱
さすがに音楽の無い生活に限界を感じたんで、某家電量販店にイヤホンを買いに行ってきました
何が「音楽の無い生活に限界を感じた」だよ、今どきの曲何も知らねえ奴がロックの神様に選ばれた伝説のロッカーにみてぇなスタンスとるな
よくテレビで「コスパの良いイヤホン特集」みたいなのやってるじゃないですか
あれ観た瞬間は欲しいなーって思うんですけど、次の日にはもう記憶の沼に沈んでるし、いざ買いに行こうってなったときに全然役に立たないから困ってるんです
こうなることは分かってるのについつい観ちゃうんですよね、植木等みたい
今日も例にもれずお店に入って「まあ、別に何でもいいか」って思ったんですけど、いざ壁一面に並べられたイヤホンを前にしたら惰性で選ぶなんてとんでもない
ウォークマンはSONYだしイヤホンもSONYにするか、そうするとお気に入りの色が無いなあ、ハンズフリーに対応してっけど別に要らない機能だしなあ、でも欲しい色はこれなんだよなあ
悩む悩む
聞いたことはあるけど何言ってるか分からない言葉を喋ってる観光客の横で、ウンコ座りしながらスマホの「2000円台のおすすめイヤホンはこれだ」というぴったしカンカンなまとめサイトとにらめっこ、何やってんだか
レジで会計を済ませポイントカードを受け取ると同時に店員さんに「今ちょっとアンケートやってまして」と
ああ面倒だなあ、と思いつつそういう類のやつは興味がないのに断れないので流されるままアンケート担当の店員さんの元へ
何か携帯の料金プランの見直しとか何とか、よくもまあそんなことにアンケートって皮を被せたな
私の今使ってる携帯が5年くらい前のスマホなんですが、「どんな携帯使ってらっしゃいます?」の質問にも自信を持ってお見せできるような愛着のあるスマホなんですよ
店員さんもしっかり化石を見るような目で見てましたけども、何も恥ずかしくない
「フィット感が良いんですかね?」みたいなクソフォローは要らないですから
「料金プラン、見直しません?」とちょっと面倒なことになってきそうだったので、「simフリーなんでたぶんめちゃめちゃ安いと思うんですけど」と王手を決めると、店員さんの顔が一瞬ぐにゃっとなったような気がしました
「20○○年以前のスマホはsimフリーできないと思うんですけど、これ何年くらい使ってます?」
地雷踏んだかな、面倒のベクトルが違う方向に向きだした
「5年くらいですかね」
「ああ……(やっぱりね……)、脱獄してないですよね?」
脱獄ってなんだよ
おそらく家電量販店じゃ一生耳にしない言葉、ワードパワー強すぎでしょ、脱獄って
ネットスラングか何かか、ちょっと脱獄の意味がよく分からなかったんで「ショップでsimロックを外してもらいまして」と今の携帯を使ってる経緯を話したら、「私には何とも言えない案件ですねー」としょっぱい顔されました
帰りの電車で調べたら、まああんまり推奨されてない携帯の使い方なんですって
にしても脱獄って言い方ないよね、もし豚箱に入れられたとしても模範囚になる自信はありますからね、なめられたもんだ
しょっぱい顔しながら景品の携帯用入浴剤を2つもらいました
店員もこんな脱獄野郎に入浴剤渡したくなかったろうし、私も家じゃ湯船に浸からないから欲しくなかったし、そんな2人の間にいる入浴剤が一番かわいそう
第55回 「下の下」
近所にいつも煙草を買いに行くコンビニがあって、煙草を買いに行ったときだけどのまま流れで店外の喫煙スペースで煙草を吸うんです
このコンビニ、進行方向でいうと左手にあって、喫煙スペースで煙草を吸ってると信号待ちをしてる車の助手席にまあ目が行くんですね
これはまあ私の住んでる場所柄なのかよく分からないんですが、助手席に座ってる人って凄い虚無顔してません?
「たまたま目に付く人がそうなだけ」って言われたら何も言い返せないんだけど、この喫煙スペースで吸ってると前を停まる車の助手席には高い確率で虚無が座ってる
虚無が擬人化したらこうなんだなーって毎回思う
確かに私も助手席に座ったらあんな顔してるかも
運転手に対するサービス精神は皆無、まるで別次元に居るかのような佇まいで助手席に座ってます
助手席に座るとやることは何もない
ていうか運転手以外、車に乗ってる奴にやることなんてないな
ただ良識ある人は気を遣ってカーナビを操作したり、運転手が眠くならないように話しかけたり、まあ色々やりますが
そんなサービス精神私にはねぇや、ひでぇなこりゃ
私と同じ人間だから目に付いたのか
潜在的に同じ奴を見つけて自分だけ悪者にならないようにしてたんだな、あわよくばもっとひでぇ奴見つけて自分より下の存在がいることを確認したかったのかな
そんな奴いねぇよ